こんにちは、風見です。
先日、視聴者様からこのような質問を頂きました。
私は高配当株投資がしたいと考えていますが、最近は高配当株投資はリスクが高いという話を聞きました。
リスクを抑えるには分散投資が効果的かと思います。
高配当株ETFのVYM/HDV/SPYDの3つに投資をしていれば分散できているでしょうか。
投資は自己責任ということは認識していますが、ご意見頂ければ幸いです。
こういった内容です。
今回はこの質問に回答する形で「高配当ETFのVYM/HDV/SPYDに投資をすれば分散投資になるのか」というテーマについてお話ししていきます。
- 「高配当株ETFを分けることの効果を知りたい」
- 「分散投資の目的を再確認したい」
- 「模範的な分散投資の例が知りたい」
といった方にとって有益な内容になっているので、ぜひ最後までお付き合い下さい。
最初に簡単に自己紹介させて頂きます。
わたしは給与所得を全世界株式への投資に回して、一部を米国株式ETFや個別株に投資しています。
ポートフォリオのざっくりとした内訳はこの円グラフの通りです。
個別株にも投資をしていますが、基本的にはインデックス投資が中心です。
高配当株ETF VYM/HDV/SPYDとは
はい、それでは本題です。
先ずは、今回質問頂いているVYMとHDV、SPYDについて簡単に紹介したいと思います。
VYMとは
先ずは、VYMの概要をお話しします。
VYMは正式名称をバンガード・米国高配当株式ETFといいます。
設定日は2006年でリーマンショックを経験しているETFです。
投資対象は簡単にいうと大型株の中から予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成されているETFです。
純資産は263億ドルとなっており、高配当ETFの中ではかなり純資産は大きいETFです。
経費率は0.06%とかなり低い経費率だと言えます。
配当利回りは通常時は約3%で市場平均が2%前後なので、市場平均を1ポイントほど上回る配当利回りとなっています。
組入銘柄数は約400銘柄となっており、銘柄数としては十分に分散できています。
400銘柄とかなり分散度が高いにも関わらず、市場平均よりも1ポイントほど配当利回りが高いのは非常に魅力的だと思います。
VYMの特徴としては次の2点が挙げられます。
特徴の1つ目としては高配当ETFの中で唯一リーマンショックを経験済みだという点が挙げられます。
リーマンショック時の株価と配当の動きを確認できるというのは、投資家にとっては良い情報だと言えます。
特徴の2点目としては大型株の中から高配当の株を選別している点が挙げられます。
HDVとは
次にHDVの概要をざっくりと紹介します。
HDVは資産運用額が世界No.1のブラックロック社の商品で正式名称をiシェアーズ•コア米国高配当株ETFと言います。
設定日は2011年とVYMの2006年と比べるとできて間もないETFです。
純資産は57億ドルとなっておりそこまで大きくないETFです。
経費率は0.08%となっており、VYMより若干高いですが、それでもかなり低い経費率だと言えます。
配当利回りは通常時は3.5%前後とVYMよりも配当利回りは少し高い印象のETFです。
組入銘柄数は75となっており、VYMの400社と比較すると少ないですが、75社という数値は銘柄数としては十分に分散できていると思います。
HDVの特徴としては次の2つが挙げられます。
特徴の1つ目がインデックス連動ETFではあるが、実質アクティブファンドのような運用が行われているという点です。
HDVは「事業安定性」「ビジネスの継続性」「安定的に配当が出るか」という3つの評価軸をベースにアナリストが分析し、投資対象を選別しています。
特徴の2点目としては、構成銘柄比率が時価総額加重平均ではなく、配当加重平均という点が挙げられます。
時価総額加重平均というのは、最もスタンダードな方法の一つで、代表的な指数ではS&P500などが挙げられます。
時価総額の大きさによって銘柄ごとの構成比率が決められるという方法です。
一方で配当加重平均とは、支払った配当を基準に比率を決める方法です。
SPYDとは
次にSPYDの概要を紹介します。
SPYDは世界第3位の資産運用会社であるステートストリート社が運営するETFでS&P500高配当株式ETFと言います。
設定日は2015年10月となっており、ETFの中ではかなり新しい部類です。
投資対象としてはS&P500の構成銘柄のうち、高配当利回りの上位80銘柄でそれぞれに均等投資しています。
純資産は20億ドルと主要な米国ETFの中ではかなり小さい方のETFです。
経費率は0.07%となっており、VOOやVTIといった最低コストのETFと比べるとほんの少し高目ですが、全然許容レベルだと思います。
配当利回りは約5%前後です。
高配当ETFというだけあってかなり市場平均よりも高い点が最大の特徴です。
SPYDの特徴の1点目としては、高配当ETFの中でも屈指の利回りの高さだという点です。
株価が下落している現在の配当利回りは5%を超えており、通常時でも4%前後の利回りはあります。
特徴の2点目としては80銘柄に均等投資している点が挙げられます。
時価総額や配当支払いの大きさに関わらずに全銘柄約1.25%に均等投資されています。
分散できているか?
それでは、この3つのETFに投資することで分散できているかどうかという点を考察していきます。
セクターバランスは良くなっている
3つのセクターを並べて見るときに、よく比較されるのがセクター構成です。
各ETFはこの表の通り、それなりに偏ったセクターバランスになっています。
VYMはHDV、SPYDに比べて情報技術セクターや生活必需品セクターの構成が大きいですし、HDVはエネルギー、ヘルスケアセクターの構成が大きく、SPYDは金融と不動産セクターの構成が大きいといった特徴があります。
3つのETFを合わせたセクターバランスを見てみると、セクターごとのバランスはかなり改善されているように見えます。
このことから、分散が取れていると言えるでしょうか。
分散投資の目的は?
分散できているかを判断するために、ここで再度分散投資の目的を考えてみたいと思います。分散投資の目的は大きく分けると次の3つがあります。
リスク要因の分散
先ず一つ目がリスク要因の分散です。
ここでのリスク要因とは1社に集中投資してしまうと不祥事やアクシデントが発生したときに自身の資産に大きな影響を及ぼしてしまいます。
この点はこれは銘柄やセクターを分散することで一定の効果を得ることができます。
値動きの低減
2点目が値動きの低減です。
値動きの異なる資産を複数保有することで値動きの幅を抑えるということを意味しています。
リスク・リターンのバランスの改善
3点目がリスク・リターンのバランスの改善です。
リターンが同じ100でも取るリスクが50なのと10なのとでは、投資戦略に大きく異なります。
分散投資によって、リスクを抑えつつ、より高いリターンを目指します。
こういった分散投資の目的を考えたときに、VYM・HDV・SPYDへの分散は効果的かどうかを実際のリターンを見て考察していきましょう。
高配当株ポートフォリオと市場平均
左のグラフは各ETFとS&P500の2016年以降の投資収益の推移を表しています。
一方で右グラフはVYM/HDV/SPYDに均等投資をしているポートフォリオとS&P500投資収益の推移を表しています。
この期間のリスク、シャープレシオ、市場平均との株価の相関はこの表の赤枠の通りとなっています。
この二つのグラフ及び結果をみるとリスク、つまり変動の幅は特に完全が見られていませんし、変動の幅に対するリターンの大きさを表しているシャープレシオも大きな変化はありません。
また、市場平均に対する価格の相関性にも大きな変化は見られませんでした。
よって、今回の主題である「VYM/HDV/SPYDへの投資は分散が効いているか」という点については、
3つのETFに投資をすることでの分散の効果はない
というのが私の意見です。
分散投資の良い例
では、どのようにしたら分散投資になるのかという良い例を最後にご紹介したいと思います。
ここでは米国市場全体に投資ができるETFであるVTIとアメリカの長期国債と連動したETFであるTLTを例に説明します。
左のグラフは2003年からのVTIとTLTそれぞれの投資収益を表しています。
VTIが青色の折れ線で、TLTが赤色の折れ線の推移を表しています。
この期間のVTIの年率平均リターンは10.28%で標準偏差、つまりリスクは14.64%でした。
一方で、TLTの年率平均リターンは7.52%で標準偏差は13.09%という結果でした。
VTIは株でTLTは債権なので、当然VTIの方が投資収益は結果としては優れたリターンになっており、リスクは債権であるTLTの方が抑えた運用ができていました。
では、次のスライドでこのグラフにVTIを50%、TLTを50%のポートフォリオを使いしたグラフをお見せしますが、どのような結果になると思いますか??
普通に考えると半分半分のポートフォリオにするんだったら、リターンもリスクもVTIとTLTの間になりそうですよね。
では、答え合わせです。
結果がこちらです。
このグラフの中の黄色の折れ線がVTIとTLTを50%ずつ組み合わせたポートフォリオの推移を表しています。
この期間の年率リターンは9.89%で標準偏差は8.14%となりました。
いかがでしょうか。
皆さんの想像とは少し違う結果になっているのではないでしょうか。
リターンは確かに株式100%の時からは落ちてしまっていますが、たった0.4ポイントの落ちにとどまっています。
にも関わらず、リスクは債権100%のものよりも5ポイント近く低くなりました。
このポートフォリオが最も下落したのはリーマンショックの時ですが、リーマンショックの時ですら、わずか18%の下落で済んでいます。
その時のVTIの下落は50%を超えています。
またリスクに対するリターンの効率性を示す指標のシャープレシオとソルティノレシオも共に大幅に向上していることが分かりますね。
いかがでしょうか。
これが分散ができたポートフォリオの模範例です。
値動きの幅を抑えつつ、リスク・リターンのバランスを改善するというのはこういうことですね。
他にもいろいろな組み合わせの例はありますが、私はVTI+TLTの組み合わせがシンプルで最も気に入っているので、今回は分散投資の模範例として紹介させて頂きました。
まとめ
以上、いかがでしたでしょうか。
今回は「VYM/HDV/SPYDへの投資はリスク分散できているか」というテーマについてお話ししてきました。
分散投資の目的から考えると高配当ETFを分けることでの分散効果は限定的であること、また模範的な分散投資の例としてVTIとTLTのポートフォリオを例に出しつつ、解説してきました。
皆さんの投資生活の参考になっていれば幸いです。
それでは皆さん、今日も素敵な1日をお過ごし下さい!