こんにちは、風見です。
今回は「高配当株ETF界のダークホース、SDYを徹底解説」というテーマでお話ししていきます。
先日このようなご質問を頂きました
高配当株ETFとして、よく取り上げられるものとしてVYM、HDV、SPYDの3つがありますが、先日たまたまSDYという高配当ETFを見つけました。
SDYは高配当と連続増配を組み合わせたETFのようですが、風見さんSDYに投資をしていますか?
VYM、HDV、SPYDには一部投資しているとのことですが、SDYに対する風見さんの評価をお伺いしたいです。
投資は自己責任ということは理解していますが、ご意見お聞かせ頂けると幸いです。
こういった内容です。
今回はこのご質問に回答する形でSDYという高配当株ETFを同じく高配当株ETFのVYMと比較しながら、深掘りしていきたいと思います。
- 「SDYって何?」
- 「 SDYと他の高配当株ETFの主な違いを知りたい」
- 「SDYのパフォーマンスが知りたい」
といった方にとって、有益な内容なのでぜひ最後までお付き合い下さい。
最初に簡単に自己紹介させて頂きます。
わたしは給与所得を全世界株式への投資に回して、一部を米国株式ETFや個別株に投資しています。
ポートフォリオのざっくりとした内訳はこの円グラフの通りです。
個別株にも投資をしていますが、インデックス投資が中心です。
目次
高配当株式ETF SDYとは
先ずは、SDYの概要をお話しします。
SDYは名称をS&P 米国高配当株式ETFといいます。
設定日は2005年で主要なETFの中ではそれなりに歴史のあるETFでリーマンショックを経験しているETFです。
投資対象としては20年以上連続増配している配当利回りの高い大、中、小型株が対象です。
高配当株式ETFでありながら、連続増配している銘柄に対象を絞っている珍しいETFです。
純資産は160億ドルを超えており、ETF純資産ランキングでも常にTOP50には入るレベルで世界的にはメジャーなETFです。
経費率は0.35%と主要なETFの中ではそこまで低コストというわけではありません。
VYM、HDV、SPYDはいずれも0.1%以下の経費率なので、高いレベルの競争ではありますが、コストという面だけを切り取ると競争力のないETFということになります。
配当利回りは通常時は約2.5〜3%前後です。市場平均よりは高めの配当利回りではありますが、そこまで高い配当利回りというわけではありません。
組入銘柄数は約118銘柄となっており、銘柄数としては十分に分散できています。
SDYの特徴としては、次の2点が挙げられます。
先ず1点目は高配当株でありながら、20年以上連続増配をしている銘柄に絞っているという点です。
20年以上連続で増配しているような企業は簡単には減配をしないので、配当に対するコミットが比較的強いと言えます。
2点目は構成銘柄比率は時価総額加重平均ではなく、配当利回りの高さによって決められいているという点です。
よって、後ほど構成銘柄のところでお見せしますが、構成上位銘柄はかなり配当利回りが高い銘柄で構成されています。
高配当株ETFの王道 VYMとは
次に、VYMの概要をお話しします。
VYMは正式名称をバンガード・米国高配当株式ETFといいます。設定日は2006年でSDYと同じくリーマンショックを経験しているETFです。
投資対象は米国株の大型株の中から予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成されているETFです。
純資産は275億ドルとなっており、高配当ETFの中ではかなり純資産は大きいETFです。
経費率は0.06%と先ほどのSDYの0.35%と比べてもかなり低い経費率だと言えます。
配当利回りは通常時は約3%で市場平均が2%前後なので、市場平均を1ポイントほど上回る配当利回りとなっています。
組入銘柄数は約400銘柄となっており、銘柄数としては十分に分散できています。
400銘柄とかなり分散度が高いにも関わらず、市場平均よりも1ポイントほど配当利回りが高いのは非常に魅力的だと思います。
VYMの特徴としては次の2点が挙げられます。
特徴の1つ目としては大型株の中から高配当の株を選別している点が挙げられます。
小型株を含まないので、値動きの幅が比較的少なくなることが期待できます。
特徴の2点目としては、構成銘柄比率が時価総額加重平均で決められているという点です。
よって、構成上位銘柄は配当利回りが高い銘柄よりも、時価総額が大きい銘柄で構成されています。
SDYとVYMのセクター構成
それでは、次に両ETFのセクター構成を比較していきます。
左側がSDY、右側がVYMのセクター構成です。最も大きな違いは資本財セクターです。
SDYには19%とかなり大きな割合を占めていますが、VYMでは8%と10%の差があります。
ちなみに、市場平均のVOOは8%なので、VYMが小さいというよりも SDYの資本財比率がかなり高いという点が特徴です。
次に注目すべきはテクノロジーセクターです。SDYはテクノロジーがたった2%しかありません。
VYMは11%、VOOは25%なので、SDYは非常にテクノロジーセクターが少ないことが分かります。
これはSDYの投資対象が高配当かつ20年以上連続増配という2つが大きなファクターになっているからです。
資本財セクターは成熟産業が多く、連続増配企業が多いです。
一方でテクノロジーセクターは企業活動によって得た利益を配当として株主に還元するよりも自社に再投資する傾向が強いので、相対的に連続増配銘柄が少ないという点が要因です。
SDYとVYMの構成上位10銘柄
次に各ETFの構成上位10銘柄の違いを見ていきましょう。
左側が SDY、右側がVYMの一覧を表しています。
赤色の%が配当利回りで、黒色の%が構成比率を表しています。2つのETFを比べてみると、特徴の違いがよく分かりますね。
VYMの構成銘柄TOP10には、米国株投資をしている投資家であればどの銘柄も一度は聞いたことがある銘柄です。
そして、構成銘柄第一位のJohnson&Johnsonの配当利回りは2.7%とそこまで利回りが高いわけではありません。
一方で、SDYの構成銘柄TOP10の銘柄を見てみるとエクソンモービルやAT&T、シェブロンなどはご存知かと思いますが、他の銘柄はあまり聞き馴染みのない銘柄が多いと思います。
ただ、どの銘柄も非常に配当利回りが高いです。この構成銘柄は2つのETFの特徴をよく表していると思います。
高配当株ETFのパフォーマンス(2019年まで)
ここまでで、SDYとVYMの概要や特徴をざっくり認識して頂けたと思いますので、次に実際のパフォーマンスの推移を紹介します。
このグラフは2007年から2019年12月末までの SDYとVYM、S&P500連動ETFのSPYの投資収益の推移を表しています。
青色の折れ線がSDY、赤色の折れ線がVYM、黄色がSPYの推移です。
この推移を見ると2016年まではSDYもVYMもS&P500に非常に近いパフォーマンスを残していたことが分かります。
2016年以降、VYMは少し市場平均に劣後してきましたが、SDYは市場平均を上回る期間もありつつ、最終的なリターンはほぼS&P500に近いリターンを残してきたことが分かります。
この期間の年率平均リターンはSDYが8.62%、VYMが7.97%、SPYが8.71%となりました。
高配当株ETFでありながら S&P500とほぼ同レベルのリターンを残してきたSDYは非常に優秀なパフォーマンスを残してきたと言えると思います。
次に標準偏差、つまりリスクを見てみるとSDYが14.48%、VYMが14%、SPYが14.56%と僅かではありますが、SDYとVYMは市場平均よりもリスクを抑えた運用ができていたということになります。
特に直近10年はアメリカのグロース株が強かったイメージがある中で、高い配当利回りを維持しつつ、市場平均と同等のトータルリターンを残してきたSDYは非常に優秀なETFと言えると思います。
高配当ETFのパフォーマンス②(2020年単年)
では次に2020年の年初来パフォーマンスを見ていきましょう。
2019年までは市場平均と同等レベルのリターンを残してきたSDYですが、2020年は市場平均から大きく劣後しています。
年初からのリターンで見てみると市場平均であるSPYはコロナショックを乗り越えて8月末時点で年初来でプラスのリターンとなっています。
一方で高配当株のSDYとVYMは3月末の底値からはかなり回復しましたが、それでも年初来では−10%程のリターンにとどまっています。
これまで市場平均と同じレベルのリターンを出してきたSDYですが、2020年は現時点で大きく市場平均に劣後してしまっています。
要因としては、コロナショックからの回復を牽引しているハイテクセクターやヘルスケアセクターの比率の小さいこと、低調なパフォーマンスの金融セクターの比率が高いことなどが主要な要因だと考えています。
よって、パフォーマンスのところで言えることとしては、中長期的には市場平均に見劣りしないパフォーマンスを残してきたが、足元は非常に低調なパフォーマンスを見せているということです。
高配当SDYの魅力と懸念点
それでは、ここまでの内容を踏まえてVTIとVUGの魅力と懸念点をまとめたいと思います。
SDYの魅力とは
先ず SDYの魅力としては、先ず第1に高配当株にありがちな減配の心配をほとんどしなくてもいいという点が挙げられます。
もちろん銘柄入替のタイミングや構成変化のタイミングによっては短期的な減配の可能性はありますが、基本的には配当貴族一歩手前の銘柄たちなので、配当へのコミットは強いです。
高配当を維持しつつ、安定的な増配が見込めるという点が先ず一つ目の魅力です。
魅力の2点目としては、長期的に市場平均と同等レベルのトータルリターンを残してきた実績が挙げられます。
10年以上もの間、高配当を維持しつつもトータルリターンでも市場平均に負けてこなかったというのは、指数としては安心材料と言えると思います。
SDYの懸念点とは
ただ、もちろん良い点だけではありません。
先ず一つ目の懸念点としては経費率が主要な人気ETFと比較したときに相対的に高い点が挙げられます。
このチャンネルで取り上げるETFはほぼ全て0.1%以下の経費率でしたが、SDYは0.35%と高めです。
経費率をなるべく低く抑えたいというのは全投資家共通の希望なので、ここでは一つ目として取り上げました。
次に今後、短中期的にはリターンは低調に推移してしまう可能性がある点が挙げられます。
というのも、セクター構成のところで見た通り、SDYは市場平均と比べてハイテクセクター比率が小さく、金融や資本財セクターの構成が大きいです。
短期的には足元のトレンドとは逆行してしまっているという点が懸念点だと言えます。
私としてはコストが高いという点やセクター構成が特徴的すぎる点が気になって投資をしていませんが、長期的なパフォーマンス結果を重視し、いずれ市場平均に追いついてくるという考えから逆張り的に投資をしたいという方にとっては選択肢になるETFかもしれません。
実際に2007年からの12年間ほどはS&P500と同等でしたから、今後挽回してくる可能性は十分にあると思います。
まとめ
以上、いかがでしたでしょうか。
今回は高配当株ETFのSDYについてVYMと比較しながら解説してきました。
日本ではあまりメジャーなETFではありませんが、残してきた実績は高配当株ETFの中でもNo.1と言えるレベルの実績だと思います。
今回の記事がきっかけでSDYに興味が出たという方はぜひご自身でも調べてみて下さい。
それでは皆さん今日も素敵な1日をお過ごし下さい!