こんにちは、風見です。
今回はGAFAMの一角で、近年再び成長軌道にのってきたIT業界の巨人、マイクロソフトの銘柄分析をしていきたいと思います。
マイクロソフト社に関して、先日このようなツイートをしました。
https://twitter.com/hirofumi_kzm/status/1286804684376666112
👑マイクロソフトはGAFAMの中でも底堅い。
🔽マイクロソフトの強みは、OfficeやOSからの安定収益、Azureなどのクラウドサービスでの成長、積極的なM&Aなどですね👍
一時期は評価が下がっていましたが、ナデラCEOが見事に立て直しましたね🍀
クラウド事業の成長の罠には注意が必要だけど、総じて魅力的です☺️
このような内容です。
今回の記事では、私がこのように考えている理由・根拠をデータを用いて共有していこうと思います。
マイクロソフトへの投資を考えている方や最近話題のクラウド事業の市場環境に興味がある方にとって情報収集の参考になると思うので、ぜひ最後までお付き合い下さい。
最初に簡単に自己紹介させて頂きます。
わたしは給与所得を全世界株式への投資に回して、一部を米国株式ETFや個別株に投資しています。
ポートフォリオのざっくりとした内訳はこの円グラフの通りです。
個別株にも投資をしていますが、基本的にはインデックス投資を主軸においた運用をしています。
目次
マイクロソフト会社概要【MSFT】
はい、それでは本題です。
先ずはマイクロソフト社の会社概要を簡単に紹介しますね。
マイクロソフトという社名は聞いたことがない人はおそらくいないですねよ。
投資をしていない人でもほぼ100%知っているような超有名企業です。
マイクロソフトはパソコン用のOSであるWindowsやExcel、WordといったOffice製品など古くからある事業に加えて、最近はクラウドサービスなども展開している米国の超巨大IT大手企業です。
時価総額は100兆円を超えており、サウジアラビアの国有企業であるサウジアラビコム、Appleに次いで世界第3位となっています。
一方で売上高は実はそこまで大きいわけではなく、14兆円程です。
14兆円という数値はもちろん凄いのですが、AppleやAmazonの約半分、Googleの8割ほどなので、時価総額の規模と比べるとそこまで大きいわけではないですね。
いずれにせよ、世界の中でも指折りの大企業であるマイクロソフトは1975年にかの有名なビルゲイツ氏とポールアレン氏によって設立されました。
その後、ビルゲイツ氏からスティーブ・バルマー氏や現在のサティア・ナデラ氏にCEOが受け継がれている形です。
今でこそ、マイクロソフトはAppleやAmazon、Googleと肩を並べていますが、一時期は非常に評価を落としていました。
そこからV時回復と言っていいほど、今は市場からは評価されています。
マイクロソフト事業紹介
次にマイクロソフトの事業内容を簡単に紹介します。
マイクロソフトの事業は
- Productivity&Business Processes部門
- Intelligent Cloud部門
- More Personal Computing部門
の3つに分けることができます。
Productivity&Business Processes部門
Productivity&Business Processes部門では、おそらく多くの方が日々の業務で使っているExcelやPowerPointなどのOffice製品やビジネスに特化したSNSであるLinkedInなどを取り扱っている部門です。
Intelligent Cloud部門
Intelligent Cloud部門は成長産業であるクラウド事業を手がける部門で、AzureやSQLサーバーを扱っています。
More Personal Computing部門
最後がMore Personal Computing部門で、Windowsの製品やsurface、ゲーム機のX-boxなどが含まれます。
各部門の売上規模はほぼ同じで、それぞれ全体の33%くらいになっており、バランスの取れた事業推進をしています。
クラウドサービス市場環境
では次に市場環境を見ていきたいと思います。
マイクロソフトが今後頑張って行かないといけないクラウドサービス市場を見ていきましょう。
ここに載せているのは左側が2017年ごろに総務省がまとめたクラウド市場の2017年までの実績と2020年までの予測、右側の表が2019年にGartner(ガートナー)社がまとめた市場予測になります。
それぞれ参照もとが異なるのですが、総じて言えることとしては、市場規模が急速に拡大しているということです。
2022年までの予測でも年率15%以上の市場拡大を続けていますし、その後も市場成長は続くことが見込まれています。
クラウドサービス事業・競合環境
それでは次に競合環境を見ていきましょう。
先ずマイクロソフトの主力製品であるパソコン用のOSの市場に関しては、Windowsはなんと約90%のシェアをグローバルで獲得しています。
色んな人が使っているPCの10人のうち9人がマイクロソフト製品というのは凄まじいことだと思います、残りの約10%をAppleのMacOSが占めています。
普段パソコン仕事をしている方なら分かると思いますが、仕事でWindowsに慣れているとプライベート用の仕事もWindowsにしたくなりますよね。
企業としても多くの人はWindowsに慣れているので、Windowsのパソコンを採用することになります。
市場シェアをここまで盤石のものにすると他社品に乗り換えることによる追加的なコストが大きくなるので、この牙城を崩すのは相当難しいと考えています。
次に先ほど市場紹介で紹介したクラウド事業の競争環境を見ていきます。
この表は2016年から2019年の第3四半期までのクラウドサービス市場のシェアの推移を表していますが、これを見て分かる通りAmazonのAWSがやはりダントツの高シェアを誇っています。
ただ一方で市場のシェアは拡大できていません。
AWSの次にシェアが高いのがマイクロソフトのAzureです。
Azureはここ最近シェアを拡大傾向でこの3年でほぼ倍増させました。
Amazonのシェアにはまだ及びませんが、拡大していく市場でシェアも伸ばしていくことで、さらなる成長が期待されています。
以上、ここまででマイクロソフト社の会社概要、市場環境、競合環境を紹介しました。
いつもなら、ここから業績の振り返りをしてから、株価の推移を見ていくのですが、今回は先ずはじめに株価の推移を共有しておきたいと思います。
というのも、マイクロソフトの株価の推移はマイクロソフトを知る上で非常に分かりやすいデータだからです。
マイクロソフト株価推移(S&P500比較)
このグラフは2000年以降のマイクロソフトとS&P500の株価の推移となります。
水色の折れ線がマイクロソフト、紫がSP500です。
このグラフを見てわかる通り、2000年以降のマイクロソフトの株価はS&P500と比較して低調なものでした。
2000年はバルマー氏がCEOに就任した年ですが、彼がCEOだった2000年から2013年のパフォーマンスは決して素晴らしいものではありませんでした。
この期間のマイクロソフトは本当に苦しく、検索サービスであGoogleに歯が立たず、スマホ事業ではAppleに完敗、パソコン用のOSはTOPシェアでしたが、モバイルOSではGoogle・Appleの足元にも及ばず、クラウド事業ではAmazonのAWSに大きく差を開けられるなど、まさに散々な結果でした。
この期間もWindowsからの安定的な収益があり、財務基盤がしっかりとしていたにも関わらず適切なリードができないバルマー氏に対しては批判的な意見が多く上がっていました。
一方で2015年頃から投資家のマイクロソフトへの評価が一変します。
現ナデラCEOによるサブスクモデル化やクラウド事業への注力、積極的なM&Aが次々に市場から評価されました。
2016年にはLinkdInの買収、2018年にはGitHub(ギットハブ)を買収の成功が大きな要因だと思います。
またIPadほどではありませんが、タブレット端末のSurfaceも徐々に拡大している点もポイントですね。
もちろん、これらの施策はバルマー市の時代からコツコツと仕込んでいたものかもしれませんが、やはりナデラ氏による経営手腕が大きいのだと思います。
結果としてこの5年間のマイクロソフトの株価は再び成長軌道に返り咲くことになりました。
ただ、この株価にはクラウド事業の安定的な高成長が既に期待値として反映されきっているとの見方もあり、成長に陰りが見え始めれば、株価への影響もまた大きくなる可能性があることは認識しておく必要があると思います。
GAFAMの一角、マイクロソフトの業績振り返り
さて、ここまででマイクロソフトの会社概要や市場環境、競争環境に加えて、ここ20年間の事業の推移を把握して頂けたかと思うので、ここからは2010年以降の業績推移を見ていきたいと思います。
売上高・利益
それでは、先ずはリーマンショックからの回復期である2010年からの売上•利益、原価・利益構成を見ていきたいと思います。
左側のグラフは青色のグラフが売上高、オレンジが利益、灰色の折れ線グラフが利益率の推移を表しています。
2019年の売上高は約1,258億ドル、日本円では約14兆円の売上高を記録しました。
売上高の推移を見てみると2010年以降堅調に右肩上がりとなっています。
利益率は2010年は39%あったのに対して徐々に下降していき、2016年には25%まで落ち込みましたが、その後再び高収益化に成功しています。
要因としては高採算事業であるOffice365などのサブスク化やクラウド事業が急激に成長したことで、マイクロソフト内のMore Personal Computing事業の売上比率が小さくなっていったことが挙げられます。
2015年は5割ほどあった比率が現在は3割となっており、事業転換が非常にうまくいったことを表していますね。
キャッシュフロー
それでは次に2010年以降のキャッシュフローの推移を見ていきましょう。
このグラフは青色が営業キャッシュフロー、オレンジがフリーキャッシュフロー、灰色の折れ線が売上高フリーキャッシュフロー率を表しています。
このグラフを見て、お分かり頂けるように売上利益の伸びを反映する形で営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローともに伸びています。
ただ、ここ最近は投資にもキャッシュを回しています。
クラウド事業の基盤となるデータセンターやシステムなどにかなり積極的に投資をして、市場シェアを伸ばしにかかっているのだと思います。
それでもフリーキャッシュフローが潤沢なのは、安定した収益源が確保されているマイクロソフトの強みですね。
ROE・ROA、財務健全性
次に経営の効率性を示すROEとROA、財務健全性を見ていきましょう。
先ずは左側のROE、ROAから見ていきます。
ROEとはReturn on Equityの略で日本語では自己資本利益率と呼びます。
自己資本に対してどれだけの利益を出せているかを示す指標です。
ROAはReturn on Assetの略で日本語では総資産利益率と呼ばれます。
ROEが自己資本に対する利益の割合だったのに対してROAは負債を含めた総資本に対する利益の割合を示しています。
一般的にいずれも高い方がより効率的な経営が行われていると判断されます。
業種によっても大きく異なりますが、一般的にはROEは10〜20%、ROAは5〜10%以上あれば優秀な成績だと思います。
マイクロソフトのROE・ROAは上下の動きが大きいですが、それでも安定的に高いレベルと言うことができ、効率的な経営がされていることを表しています。
次に財務健全性について、右側のグラフは青色の折れ線が流動比率、オレンジが当座比率、灰色が財務レバレッジ、黄色が負債比率の推移を表しています。財務健全性についても、非常に素晴らしい数値推移となっています。
短期的な支払い能力を示す流動比率・当座比率も安定的に高いレベルで、負債比率も1以下となっており、文句なしの数値ですね。
EPS・株主還元
では、次にEPSと株主還元の推移を見ていきましょう。
左側のグラフは青色がEPSとオレンジが配当、灰色が総還元性向を表しています。
EPSとは1株当たり利益のことです。
このグラフを見るとEPSも他の指標と同様に堅調に右肩上がりとなっています。
オレンジ色の配当額もキレイな右肩上がりになっていますね。
右側のグラフは青色が株数の推移、オレンジが増配率、灰色が株数の成長率を表しています。
株数は2010年以降、安定的に減少傾向ですし、増配に関しても年率10%と非常に高い数値をキープしています。
株価は2015年ごろまで停滞していましたが、配当での株主還元は昔から一貫して継続してきたことがこれらのグラフから分かります。
では次に、このような業績推移だったマイクロソフトの投資収益がS&P500と比較してどのように推移したかを見ていきましょう。
過去10年間の投資収益比較(vsS&P500)
この表はマイクロソフトの2010年からのリターンをS&P500と比較しています。
冒頭でも見た通り、直近10年のマイクロソフトの株価は2016年までとそれ以降とでは全く違う推移を見せていますね。
この期間の年率平均リターンは約22.65%とS&P500の12.38%よりも約10ポイント近く高い数値となりました。
特に2016年以降の伸びがS&P500を圧倒する結果となりました。
株価の変動の幅を表す標準偏差もS&P500よりもかなり高くなっていますが、右側のグラフを見て頂ければ分かる通り、2016年以降はむしろS&P500よりも下落幅は少なく安定していることが分かります。
実際に、下落幅に対する投資効率を示すソルティノレシオは市場平均を大きく上回っています。
2017年までは平均的な銘柄、それ以降は素晴らしすぎる銘柄だったと言うことがわかりましたね。
投資判断:マイクロソフトは買いか?
それでは最後に定性的になってしまいますが、私が個別株の投資判断をする際に絶対に検討している10個の項目を見ていきたいと思います。
①先ず一つ目が、「価格に影響が出るブランド力はあるか」ですが、これは○としています。マーケットにおける圧倒的なシェアとブランド力を背景にある程度は思い通りの価格設定ができています。
②次に「顧客が他社品に切り替えることによる追加的なコストはあるか」という点については◯としています。Windowsやofficeは一度使い慣れてしまうと、新しいものに切り替えるのが難しい分野だからです。
③次に「周りみんなが使っていることが選ばれている理由か」というネットワーク外部性の評価は○としています。これについても、パソコン用OSに関しては特にみんなWindowsOSとOffice製品に慣れているので、あえて違うOSに乗り換えることはなかなかしないと思います。
④4点目が「インフレを価格に添加可能か」ですが、これも◯としました。寡占的な市場ではインフレの価格転嫁は可能と考えています。
⑤5点目の割安性ですが、PER的にはそこまで割安とは言えないので△としました。
⑥次に「売上・利益・EPSが右肩上がりか」という点は◯としました。特に2015年以降は成長軌道に乗っています。
⑦次に「営業利益率は高いか」は○です。高収益事業を伸ばすことで、全体の利益率を伸ばしています。
⑧8点目の「ROE・ROA」については○です。
⑨9点目が長期負債は適正な水準かという点についても◯としています。
⑩最後が「主力事業のマーケット自体の成長性」ですが、これは◯としました。クラウド事業はむしろこれから本格的な成長が始まると考えています。
MSFT銘柄分析まとめ
以上、ここまででマイクロソフトの銘柄分析をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
最後にマイクロソフトへの投資の魅力と懸念点という形でまとめると、魅力としてはその圧倒的なブランド力と業界TOPのシェアから生み出される安定的な収益とその収益をクラウド事業への投資に当てることで、企業としてさらに拡大していくことが挙げられます。
安定的な収益を持ちつつ、成長市場に投資ができると言うのは非常に強いポイントだと思います。
一方で、高すぎる業界シェアにより政府や当局から規制や訴訟につながるリスクは懸念点として挙げられると思います。
また、クラウド事業の成長が既に株価にはある程度反映されていることから、成長に陰りが見えた時点で株価にマイナスの影響を与える可能性はしっかりと認識しておく必要ああると思います。
以上、マイクロソフト社の銘柄分析をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
ナデラCEOが就任してからの快進撃は非常に素晴らしく、また基盤となる事業からの安定収益もあることから、株価成長が止まったとしても高い株主還元が期待できると言う意味では長期保有に適した銘柄だと言えると思います。
一方で、バリュエーションを気にする投資家は現段階ではなかなか投資をし辛いのも事実ですね。
皆さんはマイクロソフトをどのように評価しているでしょうか。
ぜひ皆さんの投資判断をコメント欄でお聞かせいただければと思います。
今後も私が実際に投資をしている個別銘柄を中心に銘柄分析をしていきたいと思います。
以上、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
それでは皆さん、今日も素敵な1日をお過ごしください。
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